― リフォーム営業で学んだ“判断基準のズレ”
目次
- 前回の続き ― 利他という判断軸
- 本当は断った案件だった
- なぜ“私個人”に依頼が来たのか
- 私が見ていた未来
- 「急がされている」と紹介会社から連絡が来た
- 第三者を通して確認を入れた理由
- 「理解」と「受け入れる」は違う
- 私が修正した誠実の定義
- 次からどうするか
1. 前回の続き ― 利他という判断軸
前回、私は「利他」を
行動ではなく“判断の軸”として整理しました。
誰かのために動くことが利他なのではなく、
どの基準で物事を決めるかが利他だ、と。
今回は、その軸が
実際の現場でどうズレたのかを書きます。
理屈ではなく、実体験です。
2. 本当は断った案件だった
私はリフォーム営業をしています。
ある日、紹介会社から
相見積もり前提の案件が届きました。
内容は実家の大規模リフォーム。
予算は1,000万円想定。
場所は遠方。
正直に言えば、私は一度断りました。
・遠方で移動コストが大きい
・競合が複数いる
・内容が難しく、整理に時間がかかる
・労力に対してリターンが読みにくい
簡単に「やります」と言える案件ではありませんでした。
3. なぜ“私個人”に依頼が来たのか
断ったあと、紹介会社の担当者から
再度連絡が入りました。
「会社としてではなく、あなたに担当してほしい。」
そう言われました。
理由は、
「金融面の整理や優先順位の整理まで踏み込めるのは、あなたなら安心だから。」
私は上長と確認し、
最終的に引き受けました。
売上のためというよりも、
“整理しないと将来損をする可能性がある”
そう感じたからです。
ここが今回の出発点でした。
4. 私が見ていた未来
面談で私は、市場の状況を説明しました。
・建築費は上昇傾向
・資材価格は不安定
・半年後の総額は読みにくい
私はこう伝えました。
「今の流れだと、半年後には同じ内容でも金額が上がる可能性があります。
方向性だけでも早めに固めた方が安全かもしれません。」
焦らせるつもりはありませんでした。
未来の負担を減らすための、
事実に基づいた提案でした。
私は“未来基準”で話していました。
5. 「急がされている」と紹介会社から連絡が来た
数日後、紹介会社から連絡が入りました。
「お客様から、少し急がされている感じがすると相談がありました。」
そして担当者からこう言われました。
「あなたは少しせっかちかもしれませんね。」
さらに、“少し不信感も出ている可能性がある”
というニュアンスも含まれていました。
正直、胸の奥がざわつきました。
私は急いでいない。
合理的に説明しただけ。
むしろ、将来損をしてほしくないと思っていた。
でも冷静に考えました。
私は未来を守ろうとしていた。
お客様は今を守ろうとしていた。
私は価格上昇を重く見ていた。
お客様は決断の負担を重く見ていた。
基準が違っていました。
6. 第三者を通して確認を入れた理由
経験上、
“せっかち+不信”が生まれた案件は、無理に追えば悪化します。
直接感情をぶつけるより、
一度整理を入れた方がいい。
私は紹介会社に伝えました。
「このまま整理を続ける意思があるのか、
それとも一度止めたいのか、確認してください。」
直接ではなく、
第三者を通して確認を入れました。
結果は、破談。
案件はそこで終わりました。
7. 「理解」と「受け入れる」は違う
面談中、お客様はこう言っていました。
「価格が上がる可能性があるのは理解しています。」
私はそこで共有できたと思っていました。
でも今回、はっきり学びました。
理解と、受け入れるは違う。
価格が上がると理解しても、
・今時間をつくる
・今動く
・今決断する
・今の不安を超える
そこまで覚悟できているとは限らない。
長期的利益を得るには、
必ず“今の代償”が必要です。
その代償を引き受ける準備がない状態で
合理を提示すれば、
それは正論でも、相手には圧になります。
私は、自分の正しさを少し信じすぎていたのかもしれません。
「事実だから伝えるべきだ」
「合理だから理解されるはずだ」
そう思っていました。
でも本来必要だったのは、
同意を取ることではなく、
今どこまで受け入れられているかを確認することでした。
8. 私が修正した誠実の定義
今回、私は誠実の定義を修正しました。
誠実とは、
未来の正解を押すことではない。
誠実とは、
・今動く場合の負担
・今動かない場合のリスク
・それぞれの代償
これを具体的に示し、
「どちらを選びますか?」
と委ねること。
そして、
相手が今の安心を選ぶなら、
そこに合わせること。
未来を押し付けない。
これが、今回の学びでした。
9. 次からどうするか
私はこれからも、
市場の事実を伝えます。
長期のリスクを提示します。
でも同時に、必ず確認します。
「今の負担を引き受けてでも、未来を優先しますか?」
そこまで踏み込んで、
初めて“共有”だと思っています。
利他とは、
自分の基準を通すことではない。
相手の判断基準を理解し、
その中で最善を尽くすこと。
今回の紹介案件は終わりました。
でも私は、
営業という仕事の精度が
一段上がったと感じています。

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